Background: 甲状腺髄様癌(MTC)は血清カルシトニンが高濃度であることが特徴である。 甲状腺結節性疾患患者の甲状腺髄様癌の検出には,血清カルシトニン濃度の定期的な測定が提唱されている. しかし、MTC以外の疾患では、血清カルシトニン濃度が軽度から中等度に上昇することがしばしば観察されます。 細針吸引細胞診(FNAC)はMTCを検出するための信頼できる方法ではない。 そこで、結節性甲状腺疾患患者における血清カルシトニン濃度のルーチン測定の有用性を評価し、これらの患者におけるペンタガストリン刺激試験およびFNACの妥当性を検討した。
対象と方法 甲状腺結節性疾患患者1,448名(男性285名,女性1,163名)を対象に血清カルシトニン濃度のルーチン測定を行った。 平均年齢は46歳(範囲:14~86歳)であった。 初診時には、甲状腺検査、甲状腺スキャンまたは超音波検査、血清遊離トリヨードサイロニン)(T3)、遊離サイロキシン(T4)、サイロトロピン(TSH)値、抗甲状腺自己抗体の測定が行われた。 超音波検査で甲状腺結節を触知または視認できた全患者にFNACを行い、同意の得られた39名にペンタガストリン刺激試験を行った。 血清カルシトニン濃度は,市販のキットを用いた2部位免疫測定法で測定した. また、甲状腺疾患や非甲状腺疾患のない健常者407名の血清カルシトニン濃度を測定した。
結果 血清カルシトニン濃度は,健常者403名(99.0パーセンタイル)で10 pg/mL以下,残り4名で11~13 pg/mLであった。 結節性甲状腺疾患患者1,448人中56人(3.87%)の血清カルシトニン濃度が10pg/mL以上であることがわかった。 組織学的にMTCと確認された患者10人(0.69%)が血清カルシトニンのルーチン測定で検出された。 甲状腺癌患者194人におけるMTCの有病率は5.2%であった。 MTC患者10人のうち5人は、基礎血清カルシトニン値が100 pg/mL以上であった。 残りの5人の患者は、基礎血清カルシトニン値の上昇が最小限または中等度であった(範囲、12-86 pg/mL)。 血清カルシトニン濃度は、MTCを有するすべての患者においてペンタガストリンによって100pg/mL以上に上昇した(2.4~37.7倍の増加)。 FNACは2名(22.2%)にのみMTCを示唆し,7名にはMTCの診断がつかなかった. MTC患者1名では、超音波検査で腫瘤が確認できなかったため、FNACは実施されなかった。
結論 以上の結果より,血清カルシトニンのルーチン測定は,結節性甲状腺疾患患者のMTCの早期発見に有用であることが示唆された。 また,ペンタガストリン刺激試験は,血清カルシトニン濃度の軽度あるいは中等度上昇を示す甲状腺結節性患者の評価法として信頼性が高いと思われる. しかし、FNACはMTCを検出する感度が低かった。 我々は、甲状腺結節性疾患患者において、血清カルシトニン濃度のルーチン測定を推奨する。